土用の丑の日・鰻の話

土用といえば、夏の土用の丑の日を思い浮かべられる方が多いでしょう。この日は昔から、梅干し・うどん・うりなど「う」のつくものを食べて夏バテ防止をする風習があり、「う」のつく「鰻」は、まさに疲労回復効果抜群の食べものとされていました。

土用の丑の日が近づくと、鰻屋さんばかりでなく、あちらこちらから蒲焼のいい匂いがしてきて暑さに負けそうなときも、なんとなく食欲をそそられるもの。もちろん、食べればもっと元気が出るでしょう。

鰻イメージ

鰻の調理法、関東と関西の違い

関東と関西では鰻の調理法が違います。

関東風=背開き(頭はとる)→素焼き→蒸す→再び焼く⇒柔らかい!

関西風=腹開き(頭はつけたまま)→焼く⇒パリッと香ばしい!

関西の鰻蒲焼には頭が付いています。捌き方の違いについては、武家社会の関東では切腹に通じることのない「背開き」、商人社会の関西では腹を割って話せると解釈して「腹開き」をするという説があります。

関東の背開きには、串を打って蒸すときに身の厚い背に串がさせて安定するという利点もあり、調理法としても理にかなっているようです。

鰻と梅干の食べ合わせ

昔から「鰻と梅干は食べ合わせが悪い」といわれてきました。

ところが、医学的には、梅干は胃酸を濃くして、鰻の油分の消化を助けるので一緒に食べることは逆に好ましいそうで、この言い伝えは単なる迷信のようです。

では、なぜそのような迷信が生まれたのでしょうか。これにはいろいろな説があります。

・贅沢の戒め説

 梅干は胃酸を分泌させ、食欲を増進させます。それで高価な鰻をたくさん食べられるようになるので、贅沢を戒めるために生まれたのではないか。

・過食の戒め説

 鰻も梅干も食がすすむ食材。脂っこい鰻も梅干を食べながらだとつい食べ過ぎてしまうので、食べ過ぎを防ぐ意味ではないか。

・栄養の消失説

 梅干には、脂っこい食物をさっぱりさせる性質があるので、体内で鰻の栄養分が消されてしまうのでは...と心配したため。

・食中毒の予防説

 鰻が腐っていたら酸味がある。梅干を一緒に食べると、梅の酸味のせいで鰻が腐っていることが判らないため。

このように見てみると、食べ合わせの言い伝えの中には、食べ物を大切に考えた昔の人の知恵がたくさん詰まっていますね。

土用の丑の日に鰻を食べるようになったわけ

ところで、諸説あるといえば、土用の丑の日に鰻を食べるようになった由来にもいろいろな説があります。

・平賀源内(ひらがげんない)説

 最も知られているのが、この平賀源内説。江戸時代、源内は知人から、夏に売れない鰻を売る方法はないかと、相談を持ちかけられました。源内は、「丑の日に『う』の附くものを食べると夏負けしない」という民間伝承からヒントを得て、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めました。すると、物知りとして有名な源内のいうことであればと、鰻屋は大繁盛。他の鰻屋もまねるようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着したといいます。

・大田南畝(おおたなんぽ)説

 同じような説に、江戸後期の狂歌師・戯作者である大田南畝(別号=蜀山人(しょくさんじん))が「神田川」という鰻屋に頼まれ「土用の丑の日に、鰻を食べたら病気にならない」という内容の狂歌を作って宣伝したという説もあります。

・春木屋善兵衛(はるきやぜんべえ)説

 文政年間、神田泉橋通りにある鰻屋「春木屋善兵衛」のところに大名から大量の蒲焼が注文され、「子の日」「丑の日」「寅の日」の三日間で作って保存しておいたところ、「丑の日」に作ったものだけが悪くなっていなかったからという説です。

・丑=鰻二匹説

 ひらがなで墨汁を使って毛筆で書いた「うし」という文字が、まるで2匹の鰻のように見えたからという説。

この4つの説、正しいのかどうかは明らかではありませんが、どれも皆もっともらしくて面白い話です。

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