日々の便り

2021年05月30日

七十二候「麦秋至」。日本のパンの生い立ちは?

5月31日から七十二候では「麦秋至(むぎのときいたる)」です。
麦畑が黄金色に色づき、収穫期を迎えます。季節は梅雨にさしかかるところですが、麦の穂が実り始める頃なので、麦にとっては実りの秋に相当します。「麦秋(ばくしゅう)」は夏の季語で、黄金色の波のように穂を揺らす風を「麦の秋風」といいます。

日本では、麦の種蒔きは秋から初冬にかけて行われます。秋蒔きの麦は、寒い冬を越さないと穂を出さない性質があるからです。芽が出てある程度成長したところで行われるのが日本独特の農法である「麦踏み」。麦の上からぱらぱらと土をかけ、麦をしっかりと踏みつけることで、霜柱で根が切れたり風で土が飛ばされたりするのを防ぎます。また、踏まれた刺激で寒さに強くなり、分けつ(茎が何本にも増えること)も進みます。そして、初夏の頃、収穫のときを迎えます。

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さて、小麦は様々な料理に使われますが、一番手軽で馴染み深いのがパンではないでしょうか。ごはんを中心とした和食文化の日本でも、パンは私たちの食生活にしっかり根付いていますね。日本にパンが伝わったのは1543年、戦国時代の頃です。鉄砲伝来とともに伝わり、キリスト教宣教師たちによって日本でも作られるようになりましたが、江戸幕府の鎖国政策によって禁じられ、長崎の出島など一部で作られるだけとなりました。

日本で本格的にパンが作られるようになったのは明治になってからで、西洋文化とともにパン作りが広まり、日本独自のパンも生まれました。木村屋總本店が考案したあんパンは有名ですね。その後、ジャムパンも考案されました。クリームパンは中村屋の創業者がシュークリームをヒントに開発したそうです。昭和になるとカレーパンなどの惣菜パンが人気となり、様々なバリエーションが生まれてきました。

世界各国のパンに加えてオリジナルのパンなど、日本ほどバリエーションの多い国はないかもしれませんね。おいしいパンがたくさんあって、パン好きにはたまりません。

【季節のめぐりと暦】七十二候


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