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2017年11月22日

日本の伝統色

色の文化は気候風土によって育まれるもので、日本には日本の伝統色があります。日本の草木から染め出された色合いは、日本の風土に溶け込み、心も落ち着かせてくれます。和室が落ち着くのは、畳、木、和紙など和室を構成する色のほとんどが、筋肉の緊張をゆるめてリラックス効果をもたらす色だからです。
また、伝統色は地味な色ばかりではなく、鮮やかな色もたくさんあります。それらが見事に調和するのは、天然染料の色だから。自然界の色が調和しているように、その色だけが飛び出してくることがないのです。日本の伝統色を知れば知るほど、日本人の繊細な感性や、自然の恵みを感じずにいられません。

 


■色の名前が表す世界
和服や和小物などの色に心が惹かれた時、色の名前がわかるとちょっと粋ですね。日本の伝統色には素敵な名前が付けられています。微妙な色味のそれぞれに名前がついているので全部覚えるのは難しいですが、名前を聞くとどんな色なのかが目に浮かぶような風情のある名前です。自分の好みの色の名前と由来だけでも覚えると、ますますその色が好きになりそうです。

 

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「曙色」(あけぼのいろ):夜明けの空のような色。自然の情景を思わせる色です。
「鴇色」(ときいろ)「撫子」(なでしこ)「千歳緑」(ちとせみどり):身近な動物や植物の色合いをうつしたもの。
「青竹」「若竹」「老竹」「煤竹」(すすたけ):竹の色だけでもさまざまあります。
「紅」「臙脂」(えんじ)「藍」(あい):染料の名前からとったもの。
「藍白」(あいじろ):藍の中でも藍染めの初期の色。
「甕覗」(かめのぞき):藍の染料の入った瓶を覗いた程度の薄い色。染めの様子が浮かんできそうな名前です。
「新橋色」(しんばしいろ):新橋の芸者さんが好んで着ていた流行色。
「京紫」:古来からの赤みを帯びた紫色。
「江戸紫」:「京紫」に対抗し、江戸っ子が武蔵野で採れる紫草でつくった青みを帯びた紫色。

 

また、江戸時代には「四十八茶、百鼠」という言葉が生まれるほど、茶や鼠色が豊富に流行しました。歌舞伎役者の名前をつけた「団十郎茶」「璃寛茶」(りかんちゃ)「路考茶」(ろこうちゃ)「芝翫茶」(しかんちゃ)など70以上もの茶があり、「梅鼠」(うめねず)「藤鼠」(ふじねず)「銀鼠」(ぎんねず)など、各色相の鼠色があるのです。
色の違いは無限にありますが、微妙な美しさの違いを的確に捉えて楽しもうとする日本人の感覚は素晴らしいものです。

 


■襲色目(かさねいろめ)

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日本の色には十二単(じゅうにひとえ)のように色を襲る(かさねる)色彩美があります。「襲色目」という手法で、衣の表裏や織り糸によって色を襲ね、桜の襲、菖蒲の襲、紅葉の襲などの名前をつけて、四季折々の風情を表現しました。

 


■色の知恵
植物染料には防虫や薬効があり、暮らしの知恵として活かされてきました。
【藍】紫外線を吸収し、毒虫やマムシよけにもなるため、野良着に最適。
【茜(あかね)・紅花(べにばな)】婦人病や神経痛に効くため、腰巻きに。
【鬱金(うこん)】防虫、殺菌効果があるため、衣類は鬱金の布で収納され、重要文書は鬱金で染めた紙を使いました。

 


■禁色(きんじき)
平安時代には身分によって着られる色が決められており、着てはいけない「禁色」や、この程度の色までなら構わないという「聴色」(ゆるしいろ)が定められていました。
例えば、女性なら美しい紅に憧れますが、庶民に許されたのは、染料である紅花一斤(べにばないっきん=約600g)で絹一疋(きぬいっぴき=和服地二反)を染めたときの「一斤染」(いっこんぞめ)という色。桜色よりもっと薄い色ですが、これ以上濃い色を着ることは許されなかったのです。

 

戦時中も鮮やかな色を着られなかったように、平和で豊かな時代でなければ、自由に色を楽しむことはできません。現代はだれでも自由に好きな色を身につけられます。日本の伝統色をもっと身近に、大切にしていきたいものです。

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