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2019年09月25日

リンドウ

秋の山野草として親しまれている「リンドウ」。本州から四国、九州と広く分布し、秋になると野山で自生する可憐な青紫色の花を見ることができます。園芸用としても好まれ、鉢花や切り花として楽しまれています。


■リンドウの種類
リンドウは、リンドウ科リンドウ属の多年草です。本州、四国、九州に分布していますが、本州中部以北・北海道のエゾリンドウという近縁種も含めると、ほぼ日本全土に分布しており、比較的大型のエゾリンドウ、リンドウ、トウヤクリンドウ、小型のミヤマリンドウ、フデリンドウ、ハルリンドウなどの種類があります。
リンドウは、春に芽が出て細い葉が伸び、秋になると茎の先端に数個の小さな蕾をつけます。釣鐘状の青紫色の花が寄せ合うように咲き、花が終わると葉も枯れて休眠状態になります。
園芸的改良が盛んで多くの品種が見られ、鉢花や切り花などでも人気があります。


■リンドウの咲き方の違い
あまり花が開かないなと思っているうちに枯れてしまうのはエゾリンドウ系。もともと、花が大きくは開きません。お盆用の花束に入っているのはこちらが多いですね。
パッと咲くのはササリンドウ系で、花びらがしっかり開くのでボリューム感もあります。
縦長に段々に花がついているので、そのまますっと立たせて飾るのもよいですが、茎を切り分けて、短いパーツにして小さなグラスやビンに飾るのもかわいらしいです。

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■リンドウの花から命名された「竜胆色」
古くから日本で愛されきたリンドウ。その印象的な青紫の花から、「竜胆色(りんどういろ)」という伝統色名にもなっています。「竜胆色」は、少し薄めの青紫色です。
また、「竜胆色」は「襲色目(かさねいろめ)」にもなっています。「襲色目」とは装束などの配色方法で、表地と裏地などで表現され、季節を表す配色として取り入れられてきました。「竜胆色」は、表が蘇芳、裏が青の配色で、秋を感じさせる装いのひとつとして平安貴族に好まれたそうです。
現在は青紫色だけではなく、品種改良されたパステルブルーやピンク、白などのリンドウがあります。


■リンドウは薬草としても
リンドウの根は薬として利用されていました。花が終わって、茎や葉も枯れる頃に、根を掘り採り、洗って天日で乾燥させます。これが生薬で、「竜胆(りゅうたん)」と呼ばれ、苦味が強いことでもよく知られています。
健胃生薬の熊の胆嚢(たんのう)を乾燥した「熊の胆(くまのい)」を「熊胆(ゆうたん)」といいますが、それよりさらに苦いということから、「竜の胆」として「竜胆」の名前がついたとされています。リンドウの 名前の由来は、「竜胆」の音読みが訛ったものです。 胃病み草(いやみぐさ)やケロリグサなど、胃に関する名前で呼ばれることもあります。


■リンドウの薬効に関する伝説
昔々、ある行者が日光の山奥で雪の下から草の根っこを掘り起こしているウサギを見つけ、「何か」とたずねたところ「これで主の病気を治すのです」と言って走り去った。行者は不思議に思いながら同じ根っこを掘って持ち帰り、病人に飲ませてみるとみるみる病気が治った。行者は「あのウサギは日光二荒山神社の神の化身だったに違いない」と感謝し、その根によって多くの病人が救われたという伝説があり、その根っこはリンドウの根だったといわれています。

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