2021年03月26日

スミレ

春になると、暖かい日差しを浴びながら小さく揺れる「スミレ」を見かけることがあります。
可憐なイメージのスミレですが、実は丈夫な植物で、日本各地の野原や堤防、田畑のそばに自生しています。


■日本原産の野草「スミレ」

スミレにはたくさんの種類があります。スミレはスミレ科の植物の総称としても使われていますが、本来は学名「viola mandshurica(ヴィオラマンジュリカ)」を指す名前で、日本も原産地のひとつです。和名「スミレ」の由来は、墨を入れる道具の墨入れに形が似ているから、摘んで楽しむ「摘入草」が変化したなど諸説あります。


■スミレの種類

スミレの開花時期は3月から5月で、茎が伸びてその先に葉や花がつく有茎種と、茎が伸びず葉や花柄が根もとから出る無茎種とに分けられます。
スミレの種類は世界中に400種類以上といわれ、日本には約60種類が自生するといわれますが、変種や品種、雑種も含めると、その数は約150種類ともいわれます。自然交配による交雑種も多く、品種名を確定するのは大変難しい植物です。

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■スミレの花の不思議

スミレの花には不思議な仕組みがあります。
5枚の花弁の後ろに細く膨らんだ袋状の「距(きょ)」という袋状の部分があり、この袋の中には蜜が入っています。蜜欲しさにここに潜り込んだ昆虫のからだは花粉だらけ。こうして次の花が授粉しやすくしているのです。しかし、こんなに工夫しているのに、すみれの花はあまり実を結ばないといいます。

実は、スミレは花の時期が終わると、花が開かない「閉鎖花(へいさか)」をつけます。閉鎖花はつぼみの中で自家授粉して種を作るので、開花する花よりも結実する確率が高いそうです。

種は熟すとさやが弾け、種を遠くに弾き飛ばしますが、さらに遠くに種を運ぶための作戦がアリに運んでもらうということです。種にはアリを誘引する物質「エライオソーム」がついています。その成分はアリが好む脂肪酸やアミノ酸、糖質などで、アリはエサとして種をせっせと巣に運び、エライオソームのみを食べて、種を巣の近くに捨ててくれます。おかげでスミレの種は繁殖地を広げることができるというわけです。おもしろい作戦ですね。
「閉鎖花」も「エライオソーム」もスミレだけの特徴ではありませんが、かわいらしい姿とは裏腹に、かなりの戦略家という気がします。


■スミレの花ことば

スミレの色別の花ことばを紹介します。

・紫色 「貞節」「愛」
日本人にもなじみ深いスミレらしい、奥ゆかしさを感じる花ことばですね。

・白色 「あどけない恋」「無邪気な恋」「純潔」
可憐な少女のような、白いスミレの見た目にピッタリです。

・黄色 「田園の幸福」「つつましい喜び」
春の野山に咲く黄色いスミレを見かけたら、きっとこんな気持ちになりますね。

・ピンク 「愛」「希望」
思わず微笑みたくなるような花の姿に合う、明るい花ことばです。


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■パンジー・ビオラは園芸種のスミレ

園芸店などでたくさん見かける色とりどりのパンジーやビオラもスミレの仲間。ヨーロッパに自生する野生種から作られた園芸品種です。
パンジーとビオラはよく似ていますが、花の大きさや花数が見分けるポイント。パンジーの花の方が大きく、ビオラは園芸上でパンジーの小輪多花性種ということになります。しかし、種類が豊富で新種もどんどん開発されているので見分けるのはむずかしくなっているようです。
パンジーもビオラも花の色模様がカラフルで、秋から春まで長い間咲き続けます。冬の花壇を明るく彩ってくれるかわいらしい花ですね。

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