雨が似合う花

雨だからこそ美しく咲く花もあります。しっとりと雨に濡れる風情に心を動かされるのは日本人の美意識ゆえでしょうか。梅雨の季節ならではの花めぐりも楽しいものですね。

紫陽花(あじさい)

くすんだ紫陽花の色は太陽の下よりも雨雲の下のほうが映えます。花のグラデーションがぼかしの効果になって、美しい風情を醸し出します。

紫陽花イメージ

変化する花の色

紫陽花は色が変化するのが特徴。土壌が酸性だと青系に、アルカリ性だと赤系になります。日本は火山地帯で雨も多く弱酸性なので青系が主流です。アルカリ土壌の欧州では赤系が大半なので、鮮やかな青紫の色は日本ならではの美しさです。

紫陽花はガクが美しい

花びらのように見えるのはガクの部分。中心部に小さな花を咲かせます。てまり状に咲いているのは「西洋アジサイ」。日本が原産の「ガクアジサイ」は額縁のように周囲だけに花が咲きます。

紫陽花のガクイメージ

もともと紫陽花は日本固有の植物。長崎出島に来たオランダ人シーボルトが、恋人の「お滝さん」にちなんで「オタクサ」という学名を付けて海外に初めて紹介しました。それが品種改良され、日本に逆輸入されたのが西洋アジサイです。

紫陽花の名前の由来

もともと日本では「集真藍」(あずさあい)といい、これが「あじさい」に変化しました。やがて、白居易の詩から「紫陽花」という字が当てられるようになりました。色の変化から「七変化」(しちへんげ)という別名もあります。
東京周辺では鎌倉の「明月院」があじさい寺として有名ですが、その他にも紫陽花の名所は多数あり、6月はあじさい祭りが各地で開催されます。

花菖蒲(はなしょうぶ)

野花菖蒲(のはなしょうぶ)が改良されてできたアヤメ科の園芸植物で、一般的に菖蒲というと花菖蒲のことを指し、端午の節供の菖蒲湯に使われる菖蒲はサトイモ科の別の植物です。

花菖蒲、あやめ、かきつばた、見分けられますか?

「何れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」ということわざがありますが、これはどれも美しくて優劣つけがたいという意味。花が咲くころ各地でイベントが開催されますが「菖蒲まつり」だったり、「あやめ祭り」だったり、いろいろです。

それぞれの花を見分けるポイント

・花菖蒲...水辺などの湿ったところに群生する。

花の色が多様。青紫や赤紫、白や絞りなど、大きな花をつける。
花の真ん中に黄色い斑がある。花茎が葉より長い。

花菖蒲イメージ

・あやめ...山野に生える。水がなくても生育する。

紫色の花を咲かせる。真ん中に黄色い斑があるが、それが網目模様になっている。

あやめイメージ

・かきつばた...水湿地に群生する。青紫色の花を2、3個つける。

中心にある短い花びらのような部分(内花被片)の先が尖って直立している。

かきつばたイメージ

・菖蒲...湿地に生える。菖蒲湯に使われる菖蒲は、株元近くに黄色っぽい細長い花をつける。

菖蒲イメージ

これを覚えておけば、「菖蒲と言いながら実はあやめ」「あやめじゃなくてかきつばた」などと見分けられて、鑑賞の楽しみが増えるかもしれません。
東京近郊では、江戸川河川敷に広がる「小岩菖蒲園」、江戸時代からの名所として安藤広重の浮世絵にも描かれた「堀切菖蒲園」など、たくさんの名所があります。

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