2023年04月25日

満天星躑躅(どうだんつつじ)

春にスズランに似た釣り鐘型の白い花をたくさんつける「満天星躑躅(どうだんつつじ)」。 花が終わると、夏には青々と茂り、秋には真っ赤に紅葉します。刈込に強く、生け垣などにもよく使われています。馴染み深い木なのに、名前の漢字は難しすぎますね。どういう意味があるのでしょうか。

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■満天星躑躅とは
満天星躑躅は、ツツジ科ドウダンツツジ属の日本原産の落葉低木です。現在植えられているものの多くは、小さい葉が密に茂り、刈込にも強い品種で、生け垣や庭木などに多く利用されています。4月上旬から5月中旬ごろに、白いスズランに似た釣り鐘型の花が一斉に咲き出します。秋になると葉が赤くなり、紅葉も楽しめるため好まれています。
満天星躑躅の仲間には、花色が白地に赤い縦縞の模様が入る「サラサドウダン」や赤い花の「ベニバナドウダン」などがあります。

■満天星躑躅の名前のヒミツ
・「どうだん」の意味は?
和名を「灯台躑躅」とする例も多くあります。名前の由来については諸説ありますが、木の枝の枝分かれしている様子が、昔の「結び灯台」に似ているので「灯台躑躅(とうだいつつじ)」と呼ばれ、その後呼び方が「どうだんつつじ」と変化したといわれています。「結び灯台」とは、支柱3本を結び、上下を開いて三脚のように安定させ、上部に灯明の皿をのせる灯台です。「灯台」は「燈台」と書くこともあります。

・「満天星」と書くのはなぜ?
「満天星」は中国語名の表記そのままに、日本語の読みをあてたものです。道教の神のひとりである太上老君が霊薬を作るときにこぼした霊水がこの木にかかり、まるで満天の星のように輝いたという中国の伝説が由来といわれています。中国では、白い花が咲き誇る姿を満天の星に見立てたということでしょう。
また、1991年2月に栃木県の烏山天文台発見された小惑星6786には、ドウダンツツジの名が与えられました。その漢字表記は「満天星」の表記が採用されています。

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■難しすぎる「躑躅」の字
さらに「躑躅(つつじ)」は画数も多く、とても難解な漢字ですね。木偏や草冠ではなく、2文字とも足偏で、一見、植物の名前とは思えません。旁(つくり)も複雑で、画数は2文字合わせると42画もあります。躑躅の音読みは「てきちょく」です。
かなり古い三省堂の漢和辞典で調べると①たちもとおる②花木の名、つつじとありました。「たちもとおる」もあまり聞かない言葉ですので、さらに調べると「あちこち歩きまわる。彷徨する」というような意味だそう。漢字が躑躅となった由来は、人々がツツジの美しさに見とれ、あちこち見て歩いてしまうからともいわれています。
また、躑躅は有毒で、これを羊が食べると足元をよろけさせてあがき死んでしまったことから、もともとは「羊躑躅(ようてきちょく)」といい、ツツジに「躑躅」の字があてられたという説もあります。この他にも諸説あります。
次にこの字を見たら「つつじ」と読めるかもしれませんが、書くことはきっとできないだろうと思わせる漢字です。

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