2020年02月21日

霧(きり)、靄(もや)、霞(かすみ)の違い

私達が天候や情景を語るとき、「霧が濃い」「朝靄が立ちこめる」「霞たなびく」などといいますが、「霧」「靄」「霞」はどのように違うのでしょう?その違いを知っておくと、折々にことばを使い分けることができます。

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■霧と靄は見通せる距離で区別

「霧」も「靄」も、大気中の水蒸気が凝結し水滴となって浮遊し視界が悪くなる気象現象です。同じ現象でも、気象用語では、どのぐらい見通せるかで「霧」と「靄」を区別します。
「霧」は見通せる距離が1km未満の状態をさします。また、濃い霧を「濃霧」といいますが、気象学では、陸上で見通せる距離が100m以下、海上で見渡せる距離が500m以下の場合に「濃霧」と呼ぶそうです。
一方「靄」は、1km以上、10km未満の状態をさします。
つまり、「霧」は「靄」よりも視界が悪いということです。


■霞は気象用語ではない

「霞」とは、空気中に水滴、ちり、煙などが浮かび、白っぽくなったり、ぼんやりと見えたりする現象をいいます。気象用語ではなく、文学的な表現です。

【霧】
大気中の水蒸気が凝結し水滴となって浮遊し視界が悪くなる気象現象。気象用語。
水平方向で見通せる距離が1km未満。
陸上で見通せる距離が100m以下、海上で見渡せる距離が500m以下の場合は「濃霧」
【靄】
大気中の水蒸気が凝結し水滴となって浮遊し視界が悪くなる気象現象。気象用語。
水平方向で見通せる距離が1km以上、10km未満
【霞】
空気中に水滴、ちり、煙などが浮かび、白っぽくなったり、ぼんやりと見えたりする現象。気象用語ではない。


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■霧、靄、霞の季節感

霧、靄、霞には季節感があります。
平安時代に「霧」が秋に使われるようになり、それに対して「霞」が春に用いられるようになりました。
季節の指標を表す七十二候でも、2月24日頃に「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」があります。「春霞」がたなびき始める頃という意味です。都会では春霞といってもピンとこないかもしれませんが、朝方や昼間に遠い山などを眺めると、景色がぼやけて見えることがあります。

そして、8月18日頃に「蒙霧升降(ふかききりまとう)」があり、深い霧がまとわりつくように立ち込める頃を表します。まだ残暑は厳しいものの、早朝は空気が冷え、山間部や水辺では、あたり一面が白い霧に包まれ幻想的な情景になります。
季語においても、「霞」は春、「霧」は秋に分類されています。
「靄」は単独では季語になっていませんが、「冬靄」「寒靄」などが冬の季語になっています。

【霧】秋
【靄】冬
【霞】春


■霧、靄、霞の表現

「霧」や「靄」はかかる、立ちこめるなどと表現しますが、「霞」はたなびくといいます。
また、「霧」「靄」は昼夜を問わず使われますが、「霞」は昼間に限られ、夜は「朧(おぼろ)」を用います。「朧月」と呼ばれる春のお月様です。

【霧】~かかる、~立ちこめる。昼夜を問わず使う。
【靄】~かかる、~立ちこめる。昼夜を問わず使う。
【霞】~たなびく。昼間に限られ、夜は「朧」を使う。

日本人の細やかな感性が、このようなことばにも表れているのですね。

こちらもあわせてご覧ください。
【季節のめぐりと暦】七十二候
https://www.i-nekko.jp/meguritokoyomi/shichijyuunikou/shichijyuunikou/

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