日本にはたくさんの民俗芸能が伝承されていますが、「神楽(かぐら)」もその一つ。実りに感謝して行われる秋祭りで、神楽が行われる地域もあります。神楽は私たちの身近にあるもの。お正月の獅子舞もその一つといえます。
■神楽とは?
「神楽」とは、神を祀るために演じられる神事芸能で、神の降臨や神託(神のお告げ)を願ったり、神を祝福したり、楽しませたりするために行われます。 ゆったりと舞を舞うもの、太鼓のリズムや笛の音にのって舞を舞ったり、唄ったりするもの、芝居のようにストーリーのあるものなど、内容は様々です。 また、神楽の語源は、神霊が宿る場所を意味する「神座(かむくら)」で、これが変化して「かぐら」となり、「神楽」という名になったとされています。「楽」は中世の頃までは、雅楽、舞楽、田楽のように「芸能」を意味する言葉として広く使われていました。
■神楽のはじまりは?
日本神話によると、天照大神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸(あめのいわと/あまのいわと)に隠れてしまい世の中が真っ暗になりました。そこで、天照大神を誘い出すために、岩戸の前で天鈿女命(あめのうずめのみこと)が舞を舞いました。これが神楽のはじまりであるといわれています。 そのため、神楽の演目には、古事記や日本書記からとった題材が数多く演じられており、中でも「天岩戸」「岩戸開き」などは特別な演目として扱われています。しかし、神楽に登場するのは神話のなかの神に限らず、地域によってその土地の神が登場することも少なくありません。
■神楽の種類と特徴
神楽は、大きく分けて、宮中で行われる「御神楽(みかぐら)」と、民間で行われる「里神楽(さとかぐら)」の二つに分類することができます。
「御神楽」は宮中の恒例行事として行われるもので宮内庁式部職楽部によって奏されます。毎年12月中旬に行われる「御神楽の儀」では、宮中賢所(かしこどころ)の前庭に篝火がたかれ、夕刻18時頃から深夜0時過ぎまで、静寂な闇夜の中で厳かに行われます。
「里神楽」は、巫女、神主、山伏といった人たちや、民間の人たちによって行われるもので、全国各地で行われています。舞手や衣装、道具などはそれぞれの神楽によって異なり、地域に根付いた神楽として、その地域の特色や歴史を反映したものもあります。
・巫女神楽
神に仕える巫女が舞う神楽で、笹・榊・幣・鈴・扇などを持って順めぐり、逆めぐりと旋回を繰り返しながら舞い、神がかりとなって神のお告げをしたといいます。今は様式的な美しい舞として残っています。
・採物神楽(とりものかぐら)
採物とは、榊、幣、扇、杖、弓、剣など、舞人が手に持つ物をいいます。面をつけず採物を持って舞う「採物舞」と、面をつけた「神能」(仮面舞)で構成されます。島根県の佐太神社からはじまったとされることから、出雲流神楽ともいわれます。
・湯立神楽(ゆだてかぐら)
祭場の中心に湯釜を据えて湯をたぎらせ、その湯を巫女や神職が笹などで参拝者に振りかけて穢れを祓い清めます。伊勢神宮の外宮で行われたことから、伊勢流神楽ともいわれます。
・獅子神楽
獅子頭をつけて舞う神楽です。獅子頭を御神体とし、各地を巡って祈祷やお払いを行います。大きく分けると伊勢地方などの「太神楽(だいかぐら)」と、東北地方の「山伏神楽(やまぶしかぐら)」の二系統があります。
■神楽はどこで見られるのか
神楽は、今も全国各地で行われています。上演場所は様々で、神社の祭祀としてだけでなく、定期公演をしているところ、常設会場でいつでも神楽が楽しめるところなどがあります。 一例として、島根県の石見神楽(いわみかぐら)は「奉納神楽」で、毎年9月から11月に五穀豊穣に感謝する秋祭りなどで盛んに行われていますが、定期公演も実施していて1年中県内のいくつかの会場で公演を行っています。また、東京公演などもあります。 他にもインターネットで調べてみると、公演情報がたくさんあります。日本の伝統文化「神楽」に触れる機会は身近にあることがわかります。