2021年06月21日

蚊取り線香と蚊やり器

暑くなると出てくる「蚊」。刺されると痒くてたまらないほか、赤くはれたり、ことによっては病気を媒介されたり、小さいながら侮れない虫です。蚊の対策として馴染み深いのが「蚊取り線香」です。今は電機式の無煙のものやスプレー式の虫除けが出回っていますが、蚊取り線香の香りを嗅ぐと「ああ、夏だな」と感じます。また、蚊取り線香を焚くための「蚊やり器」には、先人の工夫があります。

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■蚊ってどんな虫?
世界中には3500種類以上の蚊がいますが、暑いところを好むため約2500種類は熱帯に生息しています。日本国内には約100種類の蚊がいますが、そのなかで血を吸う蚊は30種類ぐらいです。よく知られているのが「アカイエカ」「ヒトスジシマカ」「チカイエカ」など。血を吸うのはメスだけで、産卵に必要なタンパク質をとるために吸血します。通常は花の蜜や草の汁などを吸っています。
蚊に刺されてかゆいのは、蚊が人の毛細血管から血を吸うときに出す唾液によるもので、この唾液の成分にアレルギー反応が起きてかゆみを感じます。そしてかゆいだけでなく、蚊は伝染病を媒介することもあります。日本でよく知られるのは日本脳炎ですが、マラリア、フィラリア、デング熱、ジカ熱など、たくさんあります。薬やワクチンがない病気もあるので、予防法の第一は蚊に刺されないことです。

■蚊と人間の戦い
昔、田畑で働く人々も蚊にはたいそう悩まされたことでしょう。蚊取り線香が生まれたのは130年ぐらい前のこと。それ以前の日本では、ヨモギの葉やカヤノキなどを燃やした「蚊遣火(かやりび)」の煙で蚊を追い払っていました。かなり煙そうですし、燃やし続けるのも大変そうですね。そして、寝るときは「蚊帳(かや)」を吊って涼しい風を通しながら虫の侵入を防ぐというのが日本の夏の光景でした。

■蚊取り線香の生い立ち
蚊取り線香を発明したのは日本の実業家、上山英一郎氏で、「金鳥」で知られる大日本除虫菊株式会社の創業者です。除虫菊には「ピレトリン」という天然の殺虫成分が含まれています。上山氏は1886年にアメリカから除虫菊の種を譲り受けると、日本各地で栽培を推進し、1890年に棒状の蚊取り線香を発明しました。それまでの除虫菊を乾燥させて粉にして炭火にくべるというやり方から、もっと手軽で効果的なものに進化させたのです。でも、棒状の線香では短時間で消えてしまいます。そこで、燃焼時間が長くなるように1895年に考案されたのが渦巻型。今もおなじみの蚊取り線香の原型ができあがりました。このアイデアは創業者夫人の発案として語り継がれています。

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■蚊やり器ヒストリー
蚊取り線香を焚く器といえば、豚の形の「蚊やり豚」がパッと思い出されます。なぜ豚の形だったのか、いろいろな説があるようです。

・江戸時代からあった蚊やり豚
蚊取り線香の発明以前にも豚の形の蚊やり器がありました。横向きにした徳利の底を開けたような形なので、おそらく徳利の形から考え出されたと思われます。中にヨモギなどを入れていぶしていました。

・常滑焼の土管から生まれた説
昔、豚を蚊から守るために土管の中に蚊取り線香を立てていましたが、土管では穴が大きすぎて煙が散ってしまうので、すぼめていったらなんだか豚に似てきた。そこで、愛知県の地場産業である常滑焼で豚の形の蚊やり器を作ったら大ヒットしたという説です。

・火伏の神説
猪は「火伏の神の使い」とされています。その猪を模して豚になったという説があります。

■インテリアにも素敵な蚊やり器
豚の形のほか、陶器製のものにも様々な形やデザインの蚊やり器があります。小鳥や猫などの動物だったり、家の形を模したり、色も柄も多様です。素材には陶器製のほか鋳物やスチール製のモダンなものもあり、実用性だけでなく、夏のインテリアとして楽しめる蚊やり器が増えています。
また、近年は花や柑橘系などの香りの蚊取り線香もあり、従来とは一味違う楽しみ方ができるようになりました。


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