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季節の行事

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2019年02月22日

つるしびな

古くから各地で行われてきたひな祭り。ひな飾りにも、その土地特有の伝統的なものがあり、「つるしびな」もその一つです。


■親心あふれる「つるしびな」

ひな祭りというと、親王飾りや段飾りなどが一般的ですが、「つるしびな」というかわいいひな飾りもあります。布で小さいお人形や細工物をたくさん作り、糸でつないでつるして飾るというもので、江戸時代から始まったといわれています。

ひな人形が流行り、富裕層のためにどんどん豪華なひな人形が作られる一方、一般庶民には高価なひな人形はそうそう買えるものではありませんでした。それでも、生まれてきた子どもの幸せを願う気持ちはみな同じで、お母さんやおばあちゃんが古着や端切れなどを使って小さな人形を作り、つるして飾ったのが始まりだそうです。つるしびなには、生活用具から食べ物、花や動物など、さまざまな細工物がありますが、子どもが衣食住に困らないように、その一つ一つに意味や願いが込められています。

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■三大つるし飾り

つるし飾りで有名なのが福岡県柳川市の「さげもん」、山形県酒田市の「傘福」、静岡県東伊豆町稲取の「雛のつるし飾り」です。地域の名物として多くの観光客が訪れています。

福岡県柳川市の「さげもん」は、布製の手作りの飾り物を7個7列49個と、中央に大きな柳川まりを2個下げて合計51個の飾り物をさげてあります。これは「人生50年」といわれた時代、1年でも多く長生きできるようにとの願いが込められています。
飾り物には、「這い人形(赤ちゃんの成長を願って)」、「三番叟(めでたい踊り)」、「桜(皆に愛されるように)」、「海老(年をとっても元気)」などの他、たくさんの縁起物があり、さげもん一対をひな壇の両側につるして飾ります。

山形県酒田市の「傘福」は、開いた傘にぐるりと縁起物を下げたもの。江戸時代より、子孫繁栄や子どもの健やかな成長や幸せを願って、地元の神社仏閣に奉納するという風習がありました。近年、失われつつあった伝統を市民の手で復活させ、町おこしのひとつとして盛んになりました。代表的な飾り物は「なす(事を成す)」や「さるっこ(災いが去る)」、紅花染めの細工物などがあります。

静岡県東伊豆町稲取の「雛のつるし飾り」も、ひな人形の代わりに手作りのおもちゃをつるしたことに由来します。戦後一時廃れかけていた風習を地元の方々の努力で復活し、1997年から「雛のつるし飾りまつり」も始まりました。


■ひな飾りの「犬張り子」と「犬筥」

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紙製の「犬張り子」や中にお守りが入れられる「犬筥(いぬばこ)」も、ひな飾りとしてひな壇に飾られました。犬はお産が軽く子育てもうまいので、子宝に恵まれ、お産が軽く、子どもも元気に育つようにとの願いが込められています。お守りとして、嫁入り道具に加えられ、ひな祭りに飾られるようになりました。

【暮らしを彩る年中行事】上巳
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【四季と行事食】ひな祭りの行事食
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