2021年09月10日

吾木香 (われもこう)

秋の野山に咲く「われもこう」。長い茎の先に暗紅色のお団子のような実をつけますが、実のように見えるのは花穂で、花びらはなく小さなガクの集まりです。十五夜のお月見にはすすきとともに飾られることの多い、風情ある草花です。

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■「われもこう」ってどんな花?
「われもこう」は日本各地に自生するバラ科の多年草で、秋になると長く伸ばした茎の先に暗紅色の丸い花穂をつけます。秋風に揺れる姿は野趣に富み、切花に用いられたり、お月見にすすきとともに飾られたりすることも多いです。
お団子のように丸いのは小さい花の集まりです。花びらはなく小さなガクが密集し、花穂の上の方から順に開花します。暗紅色の花穂は染料にもなり、優しいグレーに染まります。

■「われもこう」の名前の由来
「われもこう」には「吾木香」「吾亦紅」「割木瓜」「我毛紅」「我毛香」「我妹紅」など、いろいろな漢字が当てられますが、現在は主に「吾木香」「吾亦紅」「割木瓜」が使われています。どんな意味や由来があるのでしょうか。

・「吾木香」
「わが国(日本)の木香」の意味で「吾木香」となったという説があります。「木香」は中国のキク科モッコウの根のことで、健胃剤、防虫剤として利用されました。また、強い芳香があるので香道に使う「香草木」としても使われます。この木香の根に似ているから、というわけです。われもこうの根には芳香はありませんが、止血などの薬効があるので似ているとされたのでしょうか。

・「吾亦紅」
「私もまた紅い花です」という意味の「吾亦紅」という字が当てられていることも多いです。神様が、秋の野で赤い花を探したが見つからずあきらめたときに、われもこうが「吾もまた紅なり」といったという不思議な話もあり、「われもこうありたい」というはかない思いが込められているようです。和歌や俳句にもよく登場します。

 「吾も亦(また) 紅(くれない)なりと ひそやかに」(高浜虚子)
 「吾亦紅 さし出て花の つもりかな」(小林一茶)

・「割木瓜」
われもこうの小花の形が、割れ目を入れた木瓜(木の上に作られた鳥の巣)を図案化した「木瓜紋(もこうもん)」に似ているから、などの説があります。

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■薬にもなる「われもこう」
われもこうの根は生薬になります。生薬としての名前は「地楡(ちゆ)」といい、止血や下痢止めとして用いられてきました。
われもこうの学名は"Sanguisorba officinalis "といいますが、これはラテン語の"sanguis"(血)と "sorbeo"(吸う)が語源です。"officinalis "は「薬になる」という意味で、古くから止血用の薬として利用されていたことがわかります。

■われもこうの葉のお味は?
われもこうの葉は細長くふちがギザギザになっています。若葉は食べられ、お浸しや天ぷら、油炒め、佃煮などにできるそうです。
なかなか食べる機会はなさそうですが、どんな味なのか気になるところです。

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