2016年08月01日

幽霊と妖怪

夏の夜は、幽霊や妖怪が出やすいものとされてきました。
本当に幽霊や妖怪がいるかどうかはさておいて、日本では不思議な伝説や怪談話などが大切に語り継がれたり、読み継がれたりしています。怪談にでてくる幽霊や妖怪とは、一体どういうものでしょうか。

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■幽霊と妖怪はどう違う?
幽霊は、特定の人間の死霊で、特定の人を対象にして現れ、出る場所を選びません。出る時間は丑三つ時(午前2時前後)というのが定説です。
妖怪は、人間以外の精霊や死霊などの正体不明の「ものの怪(もののけ)」で、出る場所は山、川、道端、古屋敷など、ほぼ決まったところに出没します。


■「黄昏」時には妖怪が出やすい?
妖怪が出現する時間は「黄昏時(たそがれどき)」。
たそがれは古くは「誰そ彼(たそかれ)」といいました。日暮れ時は薄暗くなって人の顔が見えづらく「誰だ、あれは」という意味で「誰そ彼」といったところから、夕暮れ時を指す言葉になりました。
また「かわたれ時」という言葉もありますが、これも「彼は誰(かわたれ)」と聞かないとわからない薄暗い明け方や夕方を指しました。今は黄昏時と区別して、明け方のみを指す場合が多いです。
黄昏時は、薄暗くて見えにくい。誰かいるようだけれどわからないという恐怖心が湧き上がりやすい時間帯。妖怪と出会いそうな時間ということで、「逢う魔が時(おうまがどき)」とも呼ばれます。


■お盆はお化けのシーズン?
幽霊や妖怪は、お盆の前後に出ることが多いと思われているようですが、それにも理由があります。
お盆は旧暦の7月13日に迎え盆、15日の中日、16日の送り盆まで、先祖の霊を家に迎えて供養する行事です。
お盆に迎える霊は、「本仏(ほんぶつ)」、「新仏(あらぼとけ:新精霊)」、「無縁仏(むえんぼとけ:餓鬼霊)」の3種に大別でき、供養の仕方が違います。
本仏は祖霊なので、すぐに仏壇へ招聘し、新仏はまだ成仏できずさまよえる霊なので座敷や縁側に別の祭壇を設けて祀ります。無縁仏は家には招き入れませんが、時に悪い霊として取りついたりするので、庭に餓鬼棚を設けて供養する習慣が伝わっています。
このように供養をしても、この世に思いを残して死んだ怨霊(おんりょう)の祀り方はないがしろにされる傾向があり、幽霊はそういう怨霊の変化だとも考えられました。だから「うらめしや~」といいながら登場して来ることになるのです。

※以上、出典資料『「旬」の日本文化』(角川ソフィア文庫)p121-p123 [神崎宣武, 平成21年]


■幽霊には足がないの?
通説では、円山応挙が書いた足のない幽霊の絵が、あまりに見事だったのでそれ以降、幽霊には足がないという概念が広く植え付けられたということです。
実際に、足のある幽霊の絵もたくさんありますし、足のない幽霊の絵は応挙以前にも描かれています。それだけ応挙が描いた幽玄の世界が素晴らしいということかもしれません。


■妖怪いろいろ
日本には様々な妖怪が語り継がれています。代表的ないくつかをご紹介します。

天狗(てんぐ):風を起こし、夜は山を歩く人をめがけて石を落とします。中世期、修行が足りなかった僧が化けたといわれています。

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河童(かっぱ):
川に棲む妖怪。岸から岸へ渡ろうとする馬や人を川に引き込みます。良い人には、水田の水をいっぱいに満たしてあげるなど、親切な一面もあります。

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化け猫:
恨みを持っていると成仏できずに、天井に布団の中にと、わらわら出てきます。猫をいじめると後が怖いですよ。
踊り首:誰もいない寂しい夜道に、女の人や首を切られた武者の顔がふわふわ浮きます。
座敷童(ざしきわらし):東北地方に伝わる、子どもの霊。座敷をほうきで掃く音がしたり、子どもの笑い声やパタパタ走る音がしたりします。こちらは家を繁栄させる良い霊で、いなくなると貧乏になるそうです。
かいなで:京都に伝わる、夜トイレに入っていると現れる手だけの霊。「赤い紙やろか白い紙やろか」と唱えると逃げていきます。
一反木綿(いったんもめん):夜道を歩いていると、白い長い布が不意に降りてきて、首に巻き付きます。風呂敷が襲うとする地方もあります。

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