2025年06月21日

鱧(はも)

関西地方の夏の味として欠かせない「鱧(はも)」。
産卵期前にあたる6月から7月にかけて旬の季節となります。鱧は関東ではあまり馴染みがありませんが、関西ではポピュラーで、京都「祇園祭」や大阪「天神祭」でも欠かせない夏の魚です。

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■鱧ってどんな魚?
鱧は、鰻のように細長くうろこもありません。ウナギ目ハモ科に分類される白身魚で体の表面にはぬめりがあります。口は大きく上下のアゴに鋭い歯が数列あり、獲物を捕らえたら離しません。目が大きいのは夜行性のためです。
暖かな海を好み、紀伊水道、瀬戸内海、九州などが名産地。鱧は「梅雨の水を飲んで旨くなる」といわるように、6~7月の産卵期前の雌は栄養を蓄えており味も豊かです。
実は、鱧の旬は2回。夏の鱧は身が引き締まってさっぱりとした味わい、晩秋の鱧は脂がのって濃厚な旨味があり、「金ハモ」や「松茸ハモ」、「名残ハモ」などと呼ばれ親しまれています。

■祭りに欠かせない鱧
鱧は生命力が強く、水から揚げても皮膚呼吸で酸素を摂取して、数時間生きています。そして筋肉や骨も強いので生きたまま京へ運ぶことができたといいます。そのため近隣の大阪だけでなく、少し離れた京都などでも古くから好んで食べられてきました。
鱧が旬の6、7月は、京都市八坂神社の「祇園祭」、大阪市大阪天満宮の「天神祭」があり、鱧は「祭鱧(まつりはも)」とも呼ばれ親しまれています。祭りの期間中は鱧づくしの料理を味わい、特に7月いっぱい続く祇園祭は「鱧祭り」とも呼ばれます。

■鱧の名前の由来
「鱧」は当て字で、本来は「れい」「らい」と読み、雷魚、ナマズ、ヤツメウナギなどを意味する文字です。
鱧は鋭い歯を持つ肉食魚。捕らえられると人にも向かってくるので、「はむ(食む)」「はむ(咬む)」ことから「はも」に。古くは「歯魚」「波無」とも記されています。

■鱧の骨切りとは?
鱧は小骨がとても多いのが特徴で、取り除くのは不可能。そのため、皮1枚を残して身の部分だけに細かく包丁を入れて骨を切っていきます。これが「骨切り」という鱧独特の調理法です。「1寸(3cm)に26筋」といわれるほど、細かく包丁を入れる職人技。シャリシャリという骨を切る音が、鱧の季節の到来を伝えます。
さっと熱湯に通して冷水にとる「湯引き」にすると、身が反り返って白い花が開いたように見えるのも、なんとも涼しげです。梅肉を添えると白と赤のコントラストも鮮やかで食欲をそそります。
湯引きのほか、汁物やてんぷら、焼き物など、さまざまな料理で楽しめます。

■鱧が関東では普及しなかったわけ
前述のように、鱧は関西以西で獲れる魚で、関東や東北などの冷たい海では獲れません。地場の美味しい魚もたくさんあったので、鱧を食べるという習慣は根付きませんでした。しかも、鱧は骨切りという高度な技も必要になります。一般家庭では無理ですから、食べるなら骨切りができる調理人のいる料理店などでということになります。
関西では、古くから親しまれ技術も普及しています。スーパーなどの鮮魚コーナーでも、旬の時期は骨切り済みの鱧が販売されているので、家庭でも手軽に鱧料理が楽しめます。

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■鱧の簡単料理
骨切り済みの鱧が手に入ったら、家庭で簡単にできるおすすめ鱧料理です。
・鱧のてんぷら
鱧にてんぷらの衣をつけて揚げるだけ。少し大きめに切ってあげると豪華になりますね。
・鱧の卵とじ
鍋にだし汁と醤油、酒、みりんを入れ、玉ねぎを加えて煮ます。玉ねぎがやわらかくなったら一口大に切った鱧を加えてさっと煮、溶き卵を加えて閉じれば出来上がり。
旬の新玉ねぎを使うと甘みが増しておすすめです。
・鱧のかば焼き風
フライパンに油を熱し、鱧を皮目から焼いていきます。皮が焼けたら返して両面を焼きます。焼けたらかば焼きのたれ(市販)をからめて出来上がり。山椒をかけてピリッとさわやか。

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