三方を山に囲まれた京都の夏は、風が抜けにくく、盆地特有の蒸し暑さが続きます。しかし、夕暮れになると、からだにまとわりつくような日中の暑さを、川面を渡る風が和らげてくれます。そんな自然の涼しさを求めて、川沿いに座敷を張り出して涼を楽しむのが「川床(かわどこ)」。古くから人々が育んできた納涼の文化です。

■京都の夏の風物詩「川床」
「川床」とは、川のそばに座敷を張り出し、川風や水音を聞きながら食事を楽しめる納涼のための座敷です。京都の鴨川・貴船・高雄などの川沿いに、夏の間だけ設けられます。古くから料理屋や料亭、旅館などが提供していますが、いまはフレンチやイタリアン、カフェなど、さまざまな店があります。
川床では、川面を渡る風が涼しく、水の流れる音が心地良く響き、心がすっと落ち着きます。水面に反射する夕暮れの光も、美しい景観のひとつです。
人工的な冷房ではなく、自然の力をそのまま受け取って涼を味わう、京都の夏の風物詩です。
■鴨川の「納涼床」の歴史
豊臣秀吉の時代に鴨川の治水と河原の整備が行われ、安全になった鴨川の河原は、涼を求めて人々が集まる場所になりました。江戸時代になると、豪商たちが床几(しょうぎ。折畳み式の腰掛け)を並べて夕涼みをはじめ、川沿いには茶屋が立ち並ぶようになり、「河原の涼み」と呼ばれました。
明治時代になると、鴨川では高床が設置されるようになり、その後、規制の変更や戦争などで形を変えながらも今日まで続いています。鴨川を眺める高床の下には、大正時代に作られた人工水路「みそそぎ川」が流れています。名の由来は、古くから鴨川が"みそぎの川"として信仰されてきたことによります。
川床は、貴船・高雄にもありますが、歴史が最も古いのは鴨川で、川沿いに設けられた「高床(たかゆか)」が省略されて「床(ゆか)」や「納涼床(ゆか)」と呼ばれています。
■水神を祀る「涼の聖地」貴船
京都の北、鞍馬のさらに奥に水神を祀る古社「貴船神社」があります。貴船は古くから水神信仰の地で、参拝者が川辺で休む文化がありましたが、現在のような川の上に座敷を組む川床は大正時代にはじまったとされます。貴船の川床は、川の真上に座敷を組むのが最大の特徴で、水の流れがすぐ足元にあります。
営業は、5月〜9月末まで。標高が高いので空気がひんやりしており、真夏でも夕方は肌寒いこともあります。
貴船は「京の奥座敷」と呼ばれることから、家の中の「床(とこ)の間」のイメージと重ねて「川床(かわどこ)」と呼ばれるようになったともいわれます。
■紅葉が美しい高雄
京都市の北西部にある高雄は、清滝川の清流と渓谷が美しい深山。山間の清涼な空気の中、川のせせらぎを聞きながら、春や秋にも川床が楽しめます。特に紅葉の季節になると「高雄もみじ」と呼ばれるほど有名な美しい紅葉を眺めながら、京料理を楽しめるのが人気。店舗にもよりますが4月から11月まで営業しています。
ひとくちに「川床」といっても、場所によって雰囲気が大きく変わるのも楽しみのひとつです。
■川床を楽しむときの心得
・店に予約を忘れずに
アクセスが良く店舗も多い鴨川なら予約なしでも入れるかもしれませんが、貴船や高雄は予約していくのが安心です。
・服装に気を付けて
山間の川床は、京都の市街地に比べるとかなり気温が低いので、羽織れるものなどを持っていくのがおすすめです。
・雨の場合
雨の場合は、室内での食事になります。川床はまたの機会のお楽しみに。
また、営業期間や営業時間、駐車場の台数や有無、送迎の有無などを店舗に確認しておくと安心です。

