2026年01月15日

なまはげ

秋田県男鹿(おが)市の冬を代表する風物詩といえば、迫力満点の「なまはげ」。大晦日の夜、鬼のような面をつけ、藁の衣装をまとったナマハゲたちが家々を巡り、暴れまわります。その恐ろしい姿に子どもたちはおびえて泣いてしまうこともありますが、実はありがたい「来訪神」なのです。

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■秋田県男鹿市の伝統行事「なまはげ」
なまはげは、その恐ろしい見た目から「悪い鬼」のように見えますが、実は一年の厄を払い、家族の健康や豊作・豊漁をもたらすために山から降りてくる、ありがたい"来訪神"です。厳しい自然環境の男鹿半島は、古くから修験道の霊場として山岳信仰が盛んでした。その霊山である真山(しんざん)、本山(ほんざん)に祀られた神は地域の守護神であり、その使者がなまはげだと考えられました。
なまはげは、怠け者を戒め、災いや厄を払い、家々に新年の福をもたらすと信じられてきました。もともとなまはげの行事は、小正月1月15日に行われていましたが、現在は大晦日に行われています。

■なまはげ行事の作法
大晦日の夜、地域の若者が鬼のような面をかぶってなまはげとなり、「泣く子はいねが」「怠け者はいねが」などと叫びながら家々を巡りますが、実は、なまはげ行事には地域ごとに作法があります。典型的な例をご紹介します。

①なまはげは勝手に家に入れない
先立ち(さきだち)と呼ばれる案内役が、家の主人に入って良いかを事前に確認。
病人はいないか、もてなしの準備が整っているかなどを確かめます。
②主人の許可でなまはげが家に乱入
大きな叫び声とともに家に入ります。迫力満点の登場です。
(真山地区では、家に上がって四股を7回踏みます。四股には穢れや邪気を払う意味があります)
③家の中を歩き回り「怠け者はいねが」と叫びながら怠け者を探す
怠け心を戒め、家族の健康を祈る意味があります。
④主人がなまはげをなだめ、酒や料理でもてなす
お膳を用意してなまはげに座ってもらいます。(真山地区では5回四股を踏んでから、座ります)
家の様子についての問答を交わしますが、これは家族の状態を神に報告する意味があります。
⑤    最後に家族の健康や豊作・豊漁を祈願し、退場
(真山地区では帰るときにも3回四股を踏みます)
1978年に「男鹿のナマハゲ」の名称で国重要無形民俗文化財に指定、また2018年にユネスコ無形文化遺産「来訪神:仮面・仮装の神々」のひとつとして登録されています。

■なまはげの名前の由来
名前の由来は、ナモミを剝ぐから「ナモミハギ」、それが「ナマハゲ」になったといいます。「ナモミ」は秋田の方言で、低温やけどでできる火斑(ひだこ)のこと。冬の間、囲炉裏のそばにばかりいる怠け者にはナモミができます。そのナモミをはぎ取る、つまり怠け者を懲らしめるという意味があります。

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■なまはげの持ち物
家々を回るなまはげの手には、包丁(木製)と桶が。いったいなんのために持っているのかというと、包丁でナモミをはぎ取るため、そして桶は剥いだナモミを入れるためだそう。実際にはぎとられるわけではないですが、考えるとやはり怖い気がします。
また、御幣(ごへい)を持っているのは、なまはげが神様の使者であることを示しています。
なまはげの面には、赤と青がありますが、その理由は諸説あります。一説によると、赤は「爺さんなまはげ」、青は「婆さんなまはげ」といわれ、いっしょに登場するなまはげは「夫婦なまはげ」と呼ばれるそう。ちょっとほほえましいですね。

■日本各地の「来訪神」
日本各地に来訪神の行事は残っています。ユネスコ無形文化遺産「来訪神:仮面・仮装の神々」を構成する文化遺産として、鹿児島県甑島の「甑島のトシドン」を拡張登録して、「男鹿のナマハゲ」「能登のアマメハギ」「宮古島のパーントゥ」「遊佐の小正月行事」「米川の水かぶり」「見島のカセドリ」「吉浜のスネカ」「薩摩硫黄島のメンドン」「悪石島のボゼ」が登録されています。いずれも、仮面・仮装の異形の姿をした者が,「来訪神」として正月などに家々を訪れ,新たな年を迎えるにあたって怠け者を戒めたり、人々に幸や福をもたらしたりする行事です。

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