冬の間寒々としていた木の枝に小さな芽が出はじめる頃、いち早く銀白色でふわふわの花穂をつける「猫柳」。花穂が猫のしっぽのように見えるのでその名があります。かわいらしさと温かみを感じて、思わず触れてみたくなるような姿で古くから親しまれてきました。
■春の訪れを感じさせる「猫柳」
猫柳はその名のとおりヤナギ科ヤナギ属の落葉低木で、日本や中国、朝鮮半島に分布しています。日当たりの良い水辺を好むので河川の土手、田のあぜ道などでもよく見られ、しだれ柳と並んで日本中で親しまれている柳の一種です。ただし、しだれ柳のように枝が下に垂れ下がるのではなく、上に伸びる立ち性のものや横に伸びる匍匐性のものがあります。
猫柳はまだ寒さの残る時期にいち早く芽吹き、2~3月頃に美しい花穂となって、花が終わると葉が出てきます。
最大の特徴は、なんといっても柔らかな毛に覆われた銀白色の花穂。冬の間、硬く赤い殻に包まれていた花芽が殻を破り、中から白いふわふわした花穂が姿を現す様子には、力強い生命力とともに、春の訪れを感じます。「猫柳」は春の季語にもなっています。
■ふわふわの花穂のヒミツ
猫柳の銀白色の毛に包まれた花穂は小さい花が集合したものです。花といっても花弁はなく、雌雄異株なので、よく見ると花穂の特徴が少し違います。花穂がやや大きくオレンジ色の雄しべがある方が雄株で、花穂がやや小さく黄色い糸のような雌しべがあるのが雌株です。春が深まるにつれて雄花は黄色い花粉をまとい、雌花は受粉後に細長い果穂へと変化していきます。果穂が熟してはじけると綿毛に包まれた種が現れ、風に運ばれていきます。
■名前の由来と花言葉
猫柳という名前の由来は、花穂の姿が猫のしっぽのようだから。英語名も "Pussy Willow"(猫の柳)と言われます。別名には、川辺に生えるので「川柳(カワヤナギ)」、犬の尾に見立てて「狗尾柳(エノコロヤナギ)」などがあります。
古くは万葉集にも「川楊/川柳(カワヤナギ)」を詠んだ歌が多くあり、江戸時代まではカワヤナギとは猫柳のことだったと思われます。猫柳は明治以降、比較的新しい呼び名です。川辺にある様々な柳の総称としてカワヤナギと言うこともあります。
また、地方によっても呼び名がいろいろあり、猫からついた名前では「ネコネコ」「ネコジャラシ」「ネコノマクラ」なども。東北では牛になぞらえて「ベコヤナギ」という呼称もあるそうです。いろいろな名前で呼ばれているところも人々に親しまれている所以でしょう。
また、猫柳の枝は四方八方に伸びていくので、「自由」「思いのまま」「開放的」「素直」などの花ことばがあります。枝ぶりだけでなく、猫の特徴にも当てはまるようでちょっと楽しくなりますね。
■身近で楽しむ猫柳
猫柳は、生命力が強く、暑さ寒さにも強いので、庭木や鉢植えにしても育てやすい樹木です。湿り気のある粘土質の土壌で日当たりが良い場所を好み、挿し木で増やすこともできます。
猫柳は、生け花やフラワーアレンジメントなどでも人気の素材です。水辺を好む猫柳は、切っても水揚げがよく、枝物の中でも扱いやすいので、大きな花器に何本か長めの枝をストンと挿してボリュームを楽しんだり、小さな瓶に挿したりするだけでも、早春の花の少ない時期に春の気配が部屋に広がります。水仙や梅などと合わせてもいいですね。
生け花用には、黒の花穂と赤い枝のコントラストが美しい「クロヤナギ」も使われます。これは猫柳の雄株の突然変異と言われています。
2026年02月28日

