日本人は清潔、風呂好きとよくいわれますが、日本独特の高温多湿な気候も、日本人を風呂好きにした要因のひとつです。世界にはシャワーだけですませる国や、入浴すらできない国もたくさんありますが、日本では、ほとんどの家に風呂があり、ゆっくり湯に浸かることができます。
さらに冬至の日の柚子湯のように、風呂は単にからだの汚れを落とすだけでなく、疲れを取り、心もからだもリラックスさせてくれます。温泉もそうですが、風呂は効能による健康促進に加えて、風情を楽しむという面もあり、大切な日本文化のひとつです。
■日本の風呂文化
もともと入浴には宗教的な「禊ぎ」(みそぎ)の要素があり、香りの強い植物で邪気を払う風習がありました。端午の節供の「菖蒲湯」、土用の「丑湯」や冬至の「柚子湯」のように、年中行事や季節の節目に「薬湯」に入るのもそのためですが、特別な日ばかりではありません。
「薬湯(くすりゆ)」が庶民に広がったのは、銭湯が発達した江戸時代。しかも「薬湯」は「混浴」が認められていたから、というのが原因です。
江戸時代、風呂がある家はほとんどなく、武士も職人も、主人も小僧も湯屋(ゆや)に通い、身分を超えた貴重なコミュニケーションの場となっていました。
当時は混浴が当たり前で、その様子をペリー提督は「入浴施設に混浴で入っているなんて、日本人は野蛮な民族だ」と評しましたが、長崎の出島にいたオランダ人医師は「日本の銭湯は秩序が保たれていて、素晴らしい国だ」と言っていたとか。
寛政の改革では「混浴禁止令」が出されましたが、あまり守られず、度々「混浴禁止令」が出される始末で、その打開策として混浴が認められた「薬湯風呂」が流行ったといわれています。
※菖蒲湯について詳しくはこちらをご覧ください。 →菖蒲湯
※丑湯について詳しくはこちらをご覧ください。 →丑湯
※柚子湯について詳しくはこちらをご覧ください。 →冬至(柚子湯)
■12ヶ月の薬湯
銭湯でも四季折々の薬湯を楽しめるようになっていますが、自宅でゆっくり浸かるのも良いものです。月ごとにおすすめの薬湯をまとめました。
・1月 松湯
松の葉を煮出し、さらに松葉を浮かべます。血行促進に良いといわれます。
・2月 大根湯
天日干しした大根の葉を刻んで入れます。新陳代謝を促します。
・3月 蓬(よもぎ)湯
葉を煮出します。香りが良く、邪気払いの湯とされました。
・4月 桜湯
桜の樹皮を煮出します。さらに花びらを浮かべて風情をプラスします。
・5月 菖蒲湯
菖蒲をそのまま入れます。爽やかな香りで邪気を払います。
・6月 どくだみ湯
どくだみを刻んで入れます。あせもや湿疹に良いといわれます。
・7月 桃湯
桃の葉を入れます。丑(うし)の日に桃湯に入る「丑湯」(うしゆ)の風習もあります。
・8月 薄荷湯(はっかゆ)
干した薄荷(ミント)を蒸らして入れます。肌がさっぱりします。
・9月 菊湯
重陽の節供に葉や花を浮かべて、不老不死を願います。
・10月 生姜湯
絞り汁やスライスした生姜を入れます。ぽかぽかとよく温まります。
・11月 蜜柑湯
蜜柑の皮を干して入れます。湯冷めせず、美肌にも良いといわれます。
・12月 柚子湯
湯船に浮かべたり、絞ったりします。冬至に柚子湯に入ると風邪を引かないといわれます。
さて、今日は何湯を楽しみましょうか。