2018年12月03日

四季折々の日本酒の楽しみ

ドイツにはビール、フランスにはワイン、イギリスにはウイスキー・・・。
世界各国に民族のお酒がありますが、日本酒は、燗でよし、冷やでよしという世界でも珍しいお酒です。そして四季折々に、さまざまな楽しみがあります。

 


■酒造りの一年
日本酒は、日本独特の気候風土と知恵の結晶です。日本各地の水の恵みを受け、季節の移ろいとともに育ちます。

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【冬】
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日本酒は低温で仕込み、低温で熟成させるため、本格的な酒造りは冬から始まります。

水、米、麹を仕込んで醪(もろみ)を造り、1ヶ月ほど発酵させます。おいしい水、おいしい米、厳しい寒さの土地に美味しい酒が多いのはそのためです。

 

【春】
春の足音が聞こえる頃、発酵した醪を酒袋に入れ、酒を絞ります。
最初に力を加えず自然にしたたり落ちてきたものを「荒走り」、次に垂れてくるものを「中取り」、その後絞ったものを「押切り」といいます。
蔵元によって、荒走りや中取りのみを瓶詰めしたり、ブレンドしたり、出荷する時期もさまざまです。
多くは味が馴染む秋まで蔵の中で眠りますが、若々しいまま出荷される荒走りは、この時期ならではのフレッシュな味わいです。

 

【夏】
新緑の頃、貯蔵している酒の熟成具合をみるために「呑み切り」が行われます。樽の呑口を開けることからその名前がつきました。
「呑み切り」は、品質分析をして酒の出来を把握し、出荷の時期を決める大切な行事です。

 

【秋】
暑さもゆるみ秋の気配が感じられる頃、「冷おろし」が出回ります。通常、貯蔵するときと瓶詰めのときに火入れをするのですが、冷おろしは瓶詰めのときに火入れをせず、冷たいまま卸すことからこの名前がつきました。円熟し、調和のとれたまろやかさは、日本酒の旬と称され人気があります。
やがて、蔵の中で眠っていた酒も飲み頃を迎え、次々と出荷されていきますが、また新しい酒米が収穫され、蔵の中で酒になるのを待つのです。

 


■日本酒の主な種類
日本酒には、その原料となる米の精米度や作り方によって種類分けされています。

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【吟醸酒】
精米歩合60%以下(玄米を40%以上削ること)
雑味の原因となる米の表面を削り、低温でゆっくり発酵させるなどの「吟醸造り」で醸造され、細やかな味わい。
「純米吟醸酒」:吟醸酒の中で醸造アルコールを一切使わないもの
「大吟醸酒」:精米歩合50%以下
「純米大吟醸酒」:大吟醸酒の中で醸造アルコールを一切使わないもの

 

【純米酒】
精米歩合70%以下
文字通り米だけで造られ、醸造アルコールなどは一切添加しない。
一般的に地元の米と水、蔵で育て上げた酵母だけで作り上げ、素朴で酒本来の味が楽しめる。

 

【本醸造酒】
精米歩合70%以下
個性が強過ぎず料理のじゃまをしない。デイリータイプの代表。吟醸酒クラスの香りや味わいを持ったものもあり、好みのタイプを見つける楽しさも。

 

【生酒】
日本酒は貯蔵する前と瓶詰めする前の2回火入れ(加熱殺菌処理)を行うが、この火入れをしないものが「生酒」。フレッシュな味わいが堪能できる。
「生貯蔵酒」:1回目の火入れをしない酒
「生詰め酒」:2回目の火入れをしない酒
などもある。

 

【古酒】
熟成年度(毎年7月~翌年6月まで)を過ぎた酒はすべて「古酒」と呼ばれる。
1年古酒から数十年古酒まである。
低温の冷暗所で長期熟成させ、琥珀色を帯びた酒となり、強い個性がある。

 

【にごり酒】
お酒ができ上がる直前(発酵完了の直前)のものを荒ごししたもの。白く濁った独特の舌触りと、のど越しがある。

 


■酒の美味しい温度
冬は暖かい部屋で冷酒も乙なものですが、寒い時期はやはり燗が似合います。
また、夏の暑気払いといえば昔は冷酒とされていました。暑い日はビールもいいですが、キリッと冷えた冷酒もいいものです。
燗酒や冷酒には、その温度によってそれぞれ呼び名があるのをご存じでしょうか?

 

・燗の表現

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日向燗(ひなたかん):30℃前後
人肌燗(ひとはだかん):35℃前後
ぬる燗(ぬるかん):40℃前後
上燗(じょうかん):45℃前後
熱燗(あつかん):50℃前後
飛びきり燗(とびきりかん):55℃以上


・冷やの表現

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冷や(ひや):常温
涼冷え(すずひえ):15℃前後
花冷え(はなひえ):10℃前後
雪冷え(ゆきびえ):5℃前後

 

銘柄や種類によってばかりでなく、飲むときの温度でも味わいが広がりますね。

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