2025年08月18日

雷と避雷針

夏の午後、黒雲が空を覆い雷が落ちることがあります。ゴロゴロ、バリバリッ、ドーンと大きな音にびっくりさせられますね。雷はどうして発生するのでしょうか。また、雷の被害から建物や人を守っているのが「避雷針」です。

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■雷は巨大な電気エネルギー
積乱雲がどんどん大きくなると、上層部は氷点下に冷やされ、雲の中で水滴や氷の粒がぶつかり合って静電気がたまります。プラス(+)に帯電した小さな粒は上昇気流によって上へ移動していき、マイナス(-)に帯電した大きな粒は雲の下の方へ移動するので、雲の下の方ではマイナスが、雲の上の方ではプラスの電荷がたまっていきます。
雲の下部にマイナスの電荷がたまると、地面にはプラスの電荷が引き寄せられます。これが雷のもとになります。

■雷がゴロゴロ鳴るわけ
雷のゴロゴロという音は、本来、電気を通さない空気の中を巨大なエネルギーである雷が無理やり通り、空気を一瞬で熱して圧力を高め膨張するための衝撃音です。いろいろなものに反響して私たちにはゴロゴロと聞こえるのです。
雷が通るとき、まわりの空気の温度は一瞬で約2~3万℃にまで達するといわれます。これは、約6,000℃とされる太陽の表面よりも4~5倍も高温です。

■落雷と雲放電
たまりにたまった電気は最終的に放電されます。雲の下部のマイナス電荷が、地面のプラス電荷に放電した現象が「落雷」。ドーンという音とともに、地上に稲妻が走ります。
一方、地面ではなく雲の上部のプラス電荷に向けて電気を放電することを「雲放電」といいます。雲の中で雷が激しく光っているのを見ることがありますね。
雷のもつ電気エネルギーは電圧にすると約1億ボルトといわれ、家庭で使う電気の100万倍に相当します。落雷によるこの巨大なエネルギーが大きな被害をもたらすのです。

■避雷針の発明
巨大なエネルギーの塊である雷が身近に落ちたら大変なことになります。そこで生まれたのが「避雷針」です。発明者はアメリカのベンジャミン・フランクリン。1752年に凧を揚げて実験を行い、雷が電気であることを証明したのは有名ですね。
フランクリンは自宅に避雷針を設置しましたが、効果があるかどうかは雷が落ちるまでわかりません。そこで、友人たちの家にも避雷針をつけてもらい、そのうちのひとつに雷が落ち、建物に被害が及ばなかったことから、ようやく避雷針の効果を証明することができました。その後、アメリカでは避雷針は急速に広まり、富裕層のほとんどが避雷針を設置したといわれています。

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■避雷針の原理と新たな問題
落雷によって、火災が起きたり人命が失われたりすることもあります。これを防ぐために建物の屋上などに設置されている棒状の機器が避雷針です。
避雷針の先端はプラスの電荷を帯び、先端は尖った形状で放電しやすくなっています。雲の下部のマイナス電荷は、プラス電荷の避雷針に引き付けられて避雷針に落雷。落ちた雷の電気は、避雷針に接続した銅線から地中に埋めている銅などの金属の電極へ流して、大地へ逃がす仕組みです。つまり、避雷針は「雷を避ける」というより、「雷を呼び寄せて逃がしている」のが実態です。

しかし、落雷を全部避雷針が受けてくれるとは限りません。雷が鳴ったら建物の中に避難するなど、身を守る行動をしましょう。
また、近年は、落雷時に発生する過大な電圧「雷サージ」が電線や通信線などを伝わって建物内に侵入し、家電製品や電子機器を損傷させることがあり、避雷針だけでは解決できない問題になっています。「避雷器」など、建物内の電子機器を守る技術の進化が期待されています。

■東京タワー、東京スカイツリーは大きな避雷針&研究拠点
東京タワーや東京スカイツリーには避雷針が設置してあり、鉄製のタワーそのものが巨大な避雷針ともいえます。雷が落ちても中にいる人は安全です。
東京スカイツリーギャラリーでは最頂部634mにある避雷針を実寸大で再現した展示物を見ることもできます。また、東京スカイツリーはその高さゆえ、さまざまな観測に使われており、一番高所(497m)で行われているのが電力中央研究所の雷研究です。大切なエネルギーインフラを落雷から守るための研究などが行われています。

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