2018年06月04日

わらの活用

米を収穫するため、古くから稲の栽培が行われてきましたが、稲は米以外にもたくさんの副産物を人々にもたらしてきました。特に茎の部分、「わら」は様々な方法で利用されてきました。
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■稲の収穫方法とわら

日本人が稲作を始めたのは縄文時代といわれています。その頃の収穫は、穂だけを刈り取る「穂苅り」で、田んぼに残ったわらはそのまま土に還っていました。
7~8世紀ごろになると収穫に鉄製の鎌などが使われるようになり、稲を根元から刈り取る「根刈り」に変化しました。

pixta_11425856_S鎌で藁を切る.jpg

刈り取られた稲を脱穀して米を収穫し始めたことで、大量のわらが残ることになり、そのわらを使って様々な生活用品が作られ、利用されてきました。
特にわらの文化が発展したのは江戸時代です。江戸時代には多くの農書が残されていますが、当時使われていたわらでできた様々な生活用品が紹介されています。


■わらの特徴
稲を根元から刈り取って乾燥させ、穂を取ったものがわらで、「ハカマ(葉)」、「稈(かん:幹)」、「ミゴ(穂首)」の3つの部分に分けられます。
稈は、ほぼ円形で中は空洞です。竹のような節があり、穂先に米がたくさん実っても曲がりにくく倒れない構造になっています。引っ張る力にも強いのですが、変形しやすいので加工しやすく、中が空洞ということでクッション性や保温性があります。
これらの特徴を活かして、様々な生活用品が作られました。


■わらを使った生活用品いろいろ

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わらは、そのまま燃料や飼料、畜舎の敷きわらなどにも使われます。
ハカマを取った「すぐりわら」は、屋根葺きや土壁に使われますし、しめ縄やしめ飾りにも使われます。
このすぐりわらを叩いて加工しやすくしたものが「叩きわら」です。これを使って作られた様々な道具の例を挙げてみました。今は使われなくなったものもたくさんありますね。


【着るもの】
わらじ、わらぐつ、かさ、みの など

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【生活用品】
わら縄、かご、いずめ(おひつ入れ)、鍋敷き、べんけい(串をさすもの)、円座、むしろ、畳床、縄袋、縄のれん、わら細工の馬などの飾り物 など

この他、煮豆をわらで包んで発酵させた納豆は、わらがなければ生まれなかった食べ物です。

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様々な形で使われたわらの加工品は、傷むと補修されながら使われ、最後には燃料として燃やされたり、田畑の肥料にされたりして土に還りました。そして、また新しい稲を育むもとになったのです。
今は利用されないわらを焼く「わら焼き」が行われているところもありますが、煙やにおいなどが環境や健康に悪影響を及ぼすとして問題視されることが多いようです。自治体によっては禁止または自粛などの対策がとられていますが、稲わらを有効活用して「わら焼き」が減るといいですね。


■わらだけではない稲の副産物
【根株】(ねかぶ)稲を刈り取った後に残る
・そのまま土と混ざって田の肥料に。
【籾殻】(もみがら)籾摺りをして玄米をとった後に残る

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・燃料として燃やす
・焼いた灰を田畑の肥料に
・卵や果物を保管するときのクッション材
・枕に詰めて籾殻枕に
・牛や馬の飼料  など
【糠】(ぬか)玄米を白米に精米した後に残る

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・糠漬けの糠床に
・牛や馬の飼料に
・糠油を採る

日本人は稲を上手に利用し、使い尽くす無駄のない生活をしてきたのですね。

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