2018年07月10日

夏の花―水辺に咲く蓮と睡蓮

夏、夜が明ける頃からゆっくりと花開き、幻想的な美しさを見せる蓮。夜露が葉の上を転がり、朝日にきらめくのも清々しい光景です。優美で清らかな蓮は、天上の花にたとえられています。仏教では、「蓮は泥よりいでて泥に染まらず」ということばの通り、泥の中に生まれても汚れなく清らかに咲くことから「清浄無比の花」と尊ばれています。多くの仏典に「蓮華(れんげ)」の名で登場し、仏像の台座にもその形がよく使われています。
お盆の盆棚にも蓮の花を模した盆花を飾り、蓮の葉はご先祖様や仏様にお供え物を捧げるための器として使われます。

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■蓮ってどんな植物?

蓮の花は、7月~8月にかけて咲く夏の花。インド原産のハス科多年生水生植物で、地下茎から茎を伸ばして水面で葉を出し、夏の早朝、鮮やかなピンクや白色の花を咲かせます。葉は蝋状になっているため、水をはじき、水滴は水玉になってころころと転がります。

美しい花をいつまでも楽しみたいものですが、蓮の花の命は4日間。1日目の早朝に開花して昼頃には閉じてしまいます。2日、3日と同様に繰り返し、4日目は開花すると閉じることはなく、散ってしまいます。

「蓮」という名前の由来は、花の中心部にできる花托(かたく)の形が蜂の巣に似ていることから「はちす」となり、「はす」と呼ばれるようになったといわれています。
花托の中に入っている蓮の実は、料理やお菓子に使われます。地下茎はレンコンとして食べられますが、食用の蓮は蓮田で栽培されています。


【蓮と睡蓮の見分け方】

蓮とよく似た植物に睡蓮があります。ともに水の底の土や泥に根を張り、夏の午前中に白やピンクの花を咲かせます。花の形もよく似ていますが、見分けるポイントは葉。睡蓮の葉は切れ込みがあり、水面に広がりますが、蓮は切れ目がなく、水面より上に葉を広げます。葉を観察すると見分けがつきやすいですよ。

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■驚異的な蓮の生命力

蓮は、最も古い植物のひとつで、およそ1億4000万年前にすでに地球上に存在していたといわれており、日本でも約2000年前からすでに栽培されていたと思われます。
1951年に千葉県検見川で発見された古蓮の実は約2000年前のものと推定され、発見者の名前にちなみ「大賀蓮」と呼ばれています。
また、1971年、埼玉県行田市では、建設現場の水だまりから約1400年から3000年前のものと推定される古代蓮が自然発芽しました。
現在は古代蓮の自生地「古代蓮の里」として親しまれています。


■蓮の名所

前述の埼玉県・行田市の「古代蓮の里」の他にも、蓮の名所をいくつかピックアップしてみます。

・「上野恩賜公園 不忍池」(東京都・台東区)
江戸時代からの蓮の名所とされ、池を広く覆う蓮の葉と花は夏の風物詩。

・「手賀沼 ハスの大群生地」(千葉県・柏市)
広大な大群生地で、ハス祭り(8月上旬)の期間中は蓮見船が出て、間近でハスの花を楽しめます。

・「古河総合公園」(茨城県・古河市)
花桃が有名ですが、大賀蓮の蓮田があり、鮮やかなピンクの花を咲かせる人気のスポット。

花は早朝から咲き、昼過ぎには花弁が閉じたり、散ってしまったりするので、見ごろは早朝から午前中。見学するならとにかく早起きして出かけることです。思わず「早起きして良かった!」と言ってしまうほど神秘的な美しさを見せてくれます。

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