2024年01月25日

南天

彩りの少ない冬の庭に、南天の赤い実が鮮やかです。南天は「難を転じる」縁起の良い植物として、古くから庭木、盆栽、正月用の生け花などにも利用されてきました。また、南天は観賞用だけでなく、様々な効用があり、古くから私たちの身近で活用されてきました。

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■南天にもいろいろな種類が
南天は中国原産で、中国から伝わったものが、日本で広く自生するようになったといわれています。
南天は初夏に白色のかわいらしい花が咲き、冬には実が赤く色づきます。常緑樹ですが、条件により紅葉することがあり、赤く紅葉した南天も見応えのあるものです。数は少ないですが、白い実がなる「白(実)南天」もあります。
江戸時代には数多くの品種が作り出され、現在では40種ほどが栽培されているそうです。中でも人気の「オタフクナンテン」は、背丈が20~50cmと低く、花や実は付きづらいのですが、真っ赤に紅葉する葉が美しく、植栽や寄せ植えなどによく使われています。
花の少ない冬の時期にできる赤い実はよく目立ち、ヒヨドリなどの野鳥が実を食べます。各地に南天の自生地がありますが、鳥たちが種を運ぶためかもしれません。

■南天の名前の由来と縁起
「南天」という名前は、中国名の「南天燭(なんてんしょく)」や「南天竹(なんてんちく)」が由来といわれます。「南天燭」の燭は、実が燭(ともしび)のように赤いから、「南天竹」の竹は、幹がたくさん乱立して生える様を竹に見立てて名付けられました。これらの名が略されて「南天」になったといわれています。
南天は「難を転じる=難転」という意味もあるとされ、縁起の良い木として扱われてきました。火災除けや魔除けのために、玄関先、トイレ付近、鬼門の方角に植えられました。南天が植えられている古い家ではその名残が今でも見られます。  
南天は鉢植えでも楽しむことができるので、福寿草などと寄せ植えにして玄関先に飾ったりしても良いですね。

■南天の効用
南天の実は生薬としても用いられてきました。乾燥させた実は「南天実(なんてんじつ)」といって、咳止めの薬として利用されたり、のど飴に利用されたりします。
南天の葉には殺菌作用があるとされています。赤飯に南天の葉が乗っていることがありますが、見た目の良さだけでなく、本来の目的は防腐のためです。お祝いごとに欠かせないお赤飯には、縁起の良い南天で祝福し、防腐対策もとられていたわけです。
お正月のおせち料理のあしらいにも南天が使われますが、これもお正月のごちそうをいっそう華やかに見せるだけでなく、長持ちさせる工夫を兼ねていたのですね。

■冬に赤い実をつける木々
 冬に赤い実をつける植物は南天の他にもいろいろあります。似ているので、見分けがつきにくいのですが、実の付き方に特徴があります。

【南天】
メギ科ナンテン属で、高さは1~4メートル程度。鳥の羽のように小さな葉が並んでいます。実の付き方は、ブドウの房のようにたくさんの実を垂れ下がらせます。花束や生け花用の切り花としてよくつかわれます。漢方薬にもなり、抗菌・防腐作用があります。

【千両(せんりょう)】
センリョウ科センリョウ属で、高さは50センチ程度。葉のまわりがギザギザしています。実は、葉の上にまとまって付いています。千両は赤だけでなく、黄色の実がつくものもあります。庭植えや鉢植えのほか、切り花として花束やフラワーアレンジメントに使われています。

【万両(まんりょう)】
サクラソウ科ヤブコウジ属で、高さは1メートル程度。葉の周りが波打っているように見えます。実は、葉の下にサクランボ状に垂れ下がって付いています。実の色が白いものもあります。切り花では使われず、鉢植えなどが主です。

【十両(じゅうりょう)】
万両と同じ、サクラソウ科ヤブコウジ属で、高さは30センチ程度。葉の特徴としては周りに小さなギザギザがあります。実のつき方も万両に似てぶら下がるように付きます。ヤブコウジの名で呼ばれることも多いです。小盆栽などで見かける赤い実の植物は、十両がほとんどで苔玉や、寄せ植えなどにも活用されています。

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