夏の宵、幻想的な光を放つ蛍の舞う姿を眺める「蛍狩り」は日本の夏の風物詩です。蛍は成虫でいる期間が短く、そのはかなさにロマンチックな思いを抱いたり、淡い光に癒されたり、古くから日本人に親しまれてきました。
「蛍狩り」といっても蛍を捕まえることではありません。「狩り」という言葉には、動物などを捕まえるという意味のほかに、「紅葉狩り」などと同じように季節の風物を楽しむ、鑑賞するという意味があります。
蛍の成虫は、腹部後方に発光器があり、発光物質が光ることで光が発生します。
この光は、蛍のラブコール。オスは光を発しながら飛び回り、メスは草や木の葉の上で弱く光ります。お互いを見つけて両方が強く光れば婚約成立です。
実は、蛍の成虫期間は約1~2週間。この間、エサを食べずに夜露だけで過ごしてパートナーを探します。そして、繁殖が終わると死んでしまいます。
また、蛍でも発光しない種類もあります。
日本には40種類以上の蛍がいるといわれますが、代表的な蛍はこの3種類です。
源治蛍(ゲンジボタル)
5月下旬~6月下旬頃成虫になります。体長12~18mm。本州、九州、四国に棲息。
約2~4秒間、黄色に大きく光ります。
姫蛍(ヒメホタル)
5月下旬~7月下旬頃成虫になります。体長6~9mm。青森から九州に棲息。
桃色に一瞬光ります。
平家蛍(ヘイケボタル)
6月下旬~8月に成虫になります。体長7~10mm。北海道から九州にかけて棲息。
黄色に光ります。
「蛍狩り」を楽しむには
蛍が好むのはこんな場所
きれいで流れがゆるやかな川や水田などの水際の草むら。
水温は15~20度くらい。
エサになるカワニナがいるところ。
蛍が好むのはこんな天気
気温は20℃以上で生暖かく、曇って風のない夜。どんより曇った梅雨の夜は蛍狩りに最適です。雨が降っていたり、風が強い日や冷え込む日は、蛍はあまり飛びません。
蛍が飛び回る時間
日没1~2時間後がピーク。夜の7時半位から9時頃までがおすすめのタイミングです。
「蛍狩り」のマナー
蛍はとてもデリケートな生きものなので、脅かすと、次の年には来なくなってしまうかもしれません。「蛍狩り」のマナーを守って楽しみましょう。
①蛍は捕らない、殺さない。
②ゴミは持ち帰る。川も汚さない。
③草むらには立ち入らない。
④偽物の光を点滅させない。カメラのフラッシュもダメ。
さらに、夜道が危ない場合もあるので注意しましょう。
小さい子どもがいる場合は、野生の蛍ではなく、設備の整った蛍園で鑑賞すると安心です。
環境の変化により一時激減した蛍ですが、蛍の飛ぶ清流を取り戻そうという動きが、各地で起こっています。行政などの保護により、再び蛍の姿が復活しつつあります。
「蛍狩り」の時期は地域によってさまざまですので、あらかじめ調べてから出かけてみてはいかがでしょう。
・宮城県登米市東和町 鱒渕川(ますぶちがわ)
数万匹の源氏蛍が国の天然記念物に指定されています。
・長野県辰野町 松尾峡(まつおきょう)
明治時代から蛍の名所として有名。町ぐるみで保護しています。
・滋賀県山東町 天野川
町内全域で見られる。発光の大きな源氏蛍で、国の天然記念物に指定されています。
・京都府京都市
「哲学の道」をはじめ、名所が点在しています。