桜の季節ともなるとお花見です。「花より団子」といいますが、これは、花を眺めることよりも団子を食べることに夢中になる、つまり実際に利益のあるものの方を選ぶことのたとえです。「花見団子」は赤(実際はピンク色)、白、緑の3色が春らしくかわいい和菓子です。
■花見団子の誕生はいつ?
そもそも「花見」といえば桜の花を見ること。平安貴族たちが桜を春の花の代表格として愛で、歌を詠み、花見の宴を開いて楽しんだのが始まりです。また、農民の間では豊作祈願の行事として行われていました。豊作を願って、桜のもとで田の神様を迎え、料理や酒でもてなし、人も一緒にいただくことが本来のお花見の意味だったのです。
江戸時代になると園芸が盛んになり、春の行楽としてお花見が庶民の間にも広がりました。
花見で歴史的に有名なのが、豊臣秀吉が慶長3年春に開いた「醍醐の花見」。京都の醍醐寺は平安時代から「花の醍醐」と呼ばれるほど桜の名所でした。秀吉は花見に際してさらに700本の桜を植え、1300人余りの人が参加する盛大な宴を開きました。このときに茶菓子として振る舞われたのが色のついた団子で、これが花見団子の始まりといわれています。お花見が庶民に広がるにつれて、花見団子もお花見には欠かせないお菓子として定着していったのです。
■花見団子はなぜ3色?
花見団子の定番は、赤(実際はピンク色)白、緑の3色の団子を串に刺したもの。串に刺す順番も赤が一番上、真ん中が白、一番下が緑になっています。この色と並びにはいろいろな説があります。
・季節を表している説
赤(ピンク)は桜の春を、白は雪で冬を、緑は草木の色で夏を表し、移ろう季節を表現しているといいます。秋がないので「飽きない」と洒落をきかせた言葉遊びでもあるとか。
・春の景色を表している説
花見団子はひな祭りの菱餅と同じ色の組み合わせです。菱餅は色を重ねる順番で、春の情景を表現しているともいわれます。真ん中の白は雪で、雪の下には芽吹き始めた新芽(緑)があり、雪の上には桃の花(赤)が咲き、春の訪れを喜んでいます。花見団子もそれに倣っているという説です。
・桜の咲く様子を表している説
赤は、桜のつぼみ、やがてつぼみが開くと白い桜の花が咲き、散った後に緑の葉が出てくるという、桜が咲く順番を表しているともいわれています。
このほかにも赤い色は魔除けになるとされていますし、緑の団子に使われる蓬も邪気を払うとされています。様々な意味が重なって、花見団子はお花見の時期に欠かせないものになっているのでしょう。
■花見団子の味は?
一般的には、上新粉(うるち米が原料)や白玉粉(もち米が原料)などに、砂糖を加えて団子の生地を作ります。そして色付けするわけですが、着色料で色付けされた団子はみな同じ味になります。着色料などがなかった時代は、赤はくちなし、梅、赤しそ、桜の塩漬けなどを練りこみほんのりと染め、緑は蓬や抹茶を練りこみました。昔ながらの製法では、甘辛かったり、ほろ苦かったり、色付けする材料によっても味わいが変わって楽しいですね。
2023年03月22日