お歳暮は、日頃お世話になっている方に、1年の感謝を込めて贈る風習です。
このお歳暮は、いつごろ、どのような形で始まったのでしょうか。
お歳暮の贈り方の約束ごととあわせてご紹介します。
年の瀬に、祖先の霊に塩鮭、するめ、数の子、塩ぶり、魚介類の干物などを供えるため、嫁いだ娘や分家の者が本家に供物を届けたのが始まりです。
その後、年末に帰省できない子どもや遠方に住む親戚が、祖先の霊や年神様(新年の神様のこと)に供える供物を本家に贈るようになり、やがて、日頃お世話になっている親類や上司などにも贈られるようになりました。
「歳暮」はもともと年の暮れという意味の言葉ですが、次第に年末の贈り物の呼び名として使われるようになり、定着しました。
贈る時期
12月上旬から12月25日頃までに、先方に届くようにします。
地方によっては12月13日から贈り始めます。これは、お歳暮が正月のお供えものだった名残りで、正月事始め(12月8日または13日。地方によっては事納めという)から正月準備が始まり、すす払い(12月13日)で家や仏壇がきれいになってから届けると考えたことに由来します。また、年末に近づくほど正月準備も進むため、25日までが目安となります。
※お正月を迎える準備についてはこちらをご覧ください。 → 正月事始め
年を越しての贈り物は「御年賀」(松の内である1月7日まで。関西地方では15日まで)とし、それ以降は「寒中御見舞」「寒中御伺い」(大寒が終わる2月3日頃まで)として贈ります。
贈るもの
かつては塩鮭、数の子、塩ぶりなどの魚介類が多く贈られました。とくに鮭やぶりなどの出世魚は「年取り肴」といって、年越しに食べる風習があり、塩引きされたものは長期保存も効くことから、お歳暮としても好まれました。
この時期登場する「新巻鮭」は、鮭が「裂け」に通じて縁起が悪いので、塩鮭をわらで巻いて贈るようになったものです。
今でもお歳暮には年越し・正月に使える食料品を贈るのが主流です。産地直送品や老舗、こだわりのグルメなどバラエティに富んでいますが、大切なのは相手に喜んでいただけること。先方のご家族の好みのものを選ぶとよいでしょう。
贈る相手
一般的には、身内は両親、親戚などと、仲人、先生、先輩、上司、取引先、知人、友人などお世話になった方に贈ります。
基本的には同等以上の方に贈るものですが、とくに決まりがあるわけではありません。
また、一般的に仲人へのお歳暮は3年間でよいといわれています。
会社によっては贈答品のやりとりを禁止している場合もあるので注意してください。
※喪中の場合
お歳暮はお祝いごとではなく日頃の感謝を伝えるものなので、当方・先方のいずれかが喪中でも差支えはありません。ただし、四十九日が過ぎていない場合には、時期をずらして「寒中御見舞」「寒中御伺い」にしたり、紅白の水引きを控えたりすると良いでしょう。
お歳暮の相場
金額は、両親や上司など目上の方に対しては5,000円程度、友人など気軽な相手に対しては3,000円程度が相場です。おつき合いの度合いによって相場も違います。特別にお世話になった相手には1万円を超えることもあります。
お中元とお歳暮の両方を贈る場合には、お歳暮のほうが高額になる傾向があります。いずれにしても、お互いに負担にならない程度のものが適切です。
お歳暮のお返しは不要
お歳暮に対するお返しは不要ですが、きちんとお礼の意を表すのはマナー。配送されてきた場合には、すぐにお礼状を出すのが基本です。親しい間柄なら電話やメールでも構いません。
「のし」の付け方
お歳暮にはのし紙をつけ、水引きは紅白の蝶結びを使うのが決まりごとです。
でも、魚や肉などの生ものを贈るときには、正式にはのし(のし紙の右上につける飾りのこと)をつけません。それはのし自体が生ものの象徴なので、意味が重複してしまうからです。のしのない、水引きだけの掛け紙を使います。
知っておきたい「のし」の由来
普段私たちが「のし」という言葉を使うときには、主にのし紙のことをいいますが、本来「のし(熨斗)」とは、熨斗鮑(のしあわび)を紙で包んだもので、のし紙の右上についている飾りものを指します。
①(あわび)は吉事のお供え物だった
昔から吉事には海産物を贈る風習がありました。伊勢神宮では2000年も前からあわびをお供えするようになり、やがて日持ちのする「熨斗鮑」(のしあわび)が奉納されるようになりました。
熨斗鮑は、あわびの肉を薄くそぎ、干して琥珀色の生乾きになったところを竹筒で押して伸ばし(のし)、さらに乾燥と伸ばしを繰り返して作ったものです。
②「熨斗鮑」がめでたさの象徴
江戸時代に入ると、「熨斗鮑」が不老長寿や長寿延命に効く薬としても珍重されるようになり、さらに縁をのばす、命をのばす、慶びをのばすなど、めでたい物の象徴として贈答品に添えるようになっていきました。あわびは貴重な品なので、贈り手のお祝いの気持ちや誠意を伝えるには最高の贈り物だったのです。
③物から代用品へ、やがて印刷へと変化
しかし、とても高価で貴重な「熨斗鮑」を手軽に贈ることはできません。そこで、代用としてのし飾りが作られるようになり、さらに簡略して奉書に印刷されるようになりました。これがのし紙です。
伊勢神宮では今でも本物の「熨斗鮑」を奉納しているそうです。